東京高等裁判所 昭和27年(う)94号 判決
記録によれば、原審第一回公判において、検察官は、裁判官の面前における青木丑五郞及び市倉寛に対する各尋問調書の取調を請求し、弁護人は、これに異議を述べたのであるが、原裁判所は、その際該異議を排して右各書証の取調を行い、第二回公判に至つて刑事訴訟規則第二百七条により該書証を排除する旨の決定をした上、検察官の申請により右青木丑五郞及び市倉寛を次回公判期日に証人として喚問する旨の決定をし、第三回公判において同人等を証人として尋問したのであるが、第四回公判に於て裁判官がかわつたゝめ、あらたな裁判官による原裁判所は、該期日において公判手続を更新し、右排除にかゝる各書証を除いて証拠調をしたけれども、第五回公判に至つて前回公判以来の日時の経過を理由に更に公判手続の更新を行い、検察官が再び前記各書証の取調を求めるや、これを許可してその取調を行つたことが明らかである。公判において証拠の排除決定が行われた場合、その後公判手続の更新があつても、該排除決定は、なおその効力を有するものと解すべきことは、所論のとおりである。
しかしながら、もともと前記各尋問調書における供述者たる青木丑五郞及び市倉寛は、公判準備若しくは公判期日において供述することができないものとは認められないのであるから、原裁判所が第一回公判において一旦右各尋問調書を取り調べたが、第二回公判において該尋問調書が未だ当時の情況のもとにおいては刑事訴訟法第三百二十一条第一項第一号によつて証拠とすることができないものと認めてこれを排除したものと解されるのであつて、当時の情況下にあつては、この処置は正当であるが、第三回公判において証人として尋問された右両名の各供述は、それぞれ具体的に右各尋問調書に顕れた同人等の供述内容と一致するものでなかつたことは、当該公判調書及び右各尋問調書の各記載によつて明らかなところであるから、該証人尋問後においては、右各尋問調書は、前記刑事訴訟法の規定によつてこれを証拠とし得ることが明確になつたものである。従つて、原裁判所が第五回公判において検察官の申請によつて右各尋問調書の取調を行つたことは、正当であつて、これは、公判手続の更新とは何らかゝわりのないことである原審の訴訟手続には、所論のような法令の違反は存しない。しかも、原判決は、右各尋問調書を採証に供していないのであるから、右証拠調の適否は、判決に影響を及ぼさないものと言わなければならない。
論旨は、すべて独自の見解によるものであつて、理由がない。